マンション標準管理委託契約書を改訂(国交省)

マンションの管理の適正化に向けて

マンション標準管理委託契約書改訂(国交省)

国交省は令和5年9月11日、マンション管理適正化法等の改正、担い手確保・働き方改革、居住者の高齢化・感染症のまん延等、近年のマンション管理業を取り巻く環境の変化を踏まえ、「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」を改訂し公表しました。

多くの管理組合が、共用部分の管理について管理会社に委託しています。管理組合が管理会社と取り交わしている「管理委託契約書」には、管理組合として委託している仕事について、その範囲、内容等が細かく記載されており、委託金額も明記されています。

マンション管理の主体は、あくまで「管理組合」であり、管理会社は理事会の指示の下で管理運営をサポートするパートナーです。

管理組合は、「管理委託契約書」に定められた業務範囲と内容を理解したうえで、管理会社へ過度な依存をせず、対等で良好な協力関係を築いていきたいものです。以下、具体的な内容を掲載します(下線部分が改訂箇所です)

1.書面の電子化及びIT総会・理事会等DXへの対応

管理組合と管理会社双方における利便性・生産性向上等のため、書面の電子化やITを活用した説明等を可能とする規定等の

整備、理事会・総会をWEB会議で開催する場合の機器の調達、貸与及び設置に関する業務範囲や費用負担を明確化しました。

(ITの活用)― 新設

第25条 甲又は乙は、あらかじめ、相手方に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示した上で、その承諾を得た場合は、本契約に規定する書面及びその事務処理上必要となる書面を電磁的方法により提供することができる。

2 乙は、甲の承諾を得た場合は、第10条第1項及び第3項に規定する報告その他の報告をWEB会議システム等(電気通信回線を介して、即時性及び双方向性を備えた映像及び音声の通信を行うことができる会議システム等)により行うことができる。

(別表第1 2(1)②理事会の開催、運営支援)

五 WEB会議システム等を活用した理事会を行う場合において、甲が乙の協力を必要とするときの機器の調達、貸与及び設置の補助 なお、上記第3号及び第4号の場合において、甲が乙の協力を必要とするときは、甲及び乙は、その協力する会議の開催頻度(上限回数○回/年)、出席する概ねの時間(1回当たり○時間を目安)等の協力方法について協議するものとする。

2.担い手確保・働き方改革に関する対応(カスタマーハラスメント、管理員・清掃員の休暇取得等)

担い手確保・働き方改革の観点から、管理員等の計画的な休暇、やむ負え得ず勤務できない場合の休暇等について、対応を明確化しました。

また、カスタマーハラスメントを未然に防止するため、管理組合の指示者及び管理会社の指示の受け手を明らかにすることとし、ハラスメントに該当しうる行為をコメントに例示しました。

(別表第2 管理業務 1 業務実施の態様)(3) 休日

休日は、次の各号に掲げるとおりとする。

一 日曜日、祝日及び国が定める休日

二 夏期休暇○日、年末年始休暇(○月○日~○月○日)、その他休暇○日(健康診断、研修等で勤務できない場合を含む)。この場合、乙はあらかじめ甲にその旨を届け出るものとする。

三 忌引、病気、災害、事故等でやむを得ず勤務できない場合の休暇。この場合の対応について、乙はあらかじめ甲と協議するものとする。

管理事務の指示― 新設

第8条 本契約に基づく甲の乙に対する管理事務に関する指示については、法令の定めに基づく場合を除き、甲の管理者等又は甲の指定する甲の役員が乙の使用人その他の従業者(以下「使用人等」という。)のうち乙が指定した者に対して行うものとする。

(有害行為の中止要求)

第12条 乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。

四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為(カスタマーハラスメントに該当する行為を含む)

第12条関係 ― 新設<契約書コメント>

① いわゆるカスタマーハラスメントは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されておりこれは第1項第4号の「管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為」に該当し、組合員等が、管理業者の使用人等に対し、本契約に定めのない行為や法令、管理規約、使用細則又は総会決議等(以下「法令等」という。)に違反する行為を強要すること、侮辱や人格を否定する発言をすること、文書の掲示や投函、インターネットへの投稿等による誹謗中傷を行うこと、執拗なつきまといや長時間の拘束を行うこと、執拗な架電、文書等による連絡を行うこと、緊急でないにもかかわらず休日や深夜に呼び出しを行うことなどが含まれる。なお、管理組合の役員も管理組合の組合員であるため、当然に本条の「組合員等」に含まれることに留意すること。また、カスタマーハラスメントが発生した場合又は疑われる場合には、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考とし、企業として毅然と対応すること。

3.マンション管理業の事業環境の変化(居住者の高齢化、感染症のまん延等)への対応

・ 居住者の高齢化や感染症の流行により組合員等の共同生活に影響を及ぼすおそれがある場合や、組合員等に認知症の兆候がみられ、管理事務の適正な遂行等に影響を及ぼすおそれがあると認められる場合等に、協議により相手方への通知事項の対象としうることや、通知を受けた際の対応をコメントに記載

・ 孤立死(孤独死)等、専有部分における事件・事故の際の対応についてコメントに記載

4.その他

・(逗子のマンション法面崩落事案を踏まえ)管理業者の受託する管理業務の範囲が明確に規定されるよう、契約締結に際し、その内容を双方が明示的に確認すべきことをコメントに記載

・ 個人情報保護等に関する規定の充実

・ 宅地建物取引業者等への提供・開示事項の拡充(長期修繕計画等の写しの提供、点検・検査・調査の有無、管理員業務や清掃の内容等の開示)

※ 「管理委託契約書」は管理組合と管理会社の双方が互いに責任と義務を有する双務契約であり、双方の理解と協力が不可欠です。