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マンション改修における建設業界の現状と課題

マンション改修における建設業界の現状と課題

福管連だより2021年9月号掲載記事

マンション業界においては、分譲マンションの新規供給戸数は平成19年度をピークに減少傾向にありますが、中古マンションのストック数は今後更に増加の一途を辿ります。
令和2年におけるマンションストック総数は675,3万戸、旧耐震マンションのストック総数は103万戸となっており、この内築30年超のマンションは231.9万戸、高経年マンションとー言われる築40年超のマンションは103,3万戸、マンションストック総数の約15%あり、更に10年後には約2,2倍の231,9万戸となりマンション改修の需要は増加します。
つまり建設業界における新築工事や、商業ビル、オフィスビル等の改修工事と比較して分譲マンションの改修業界の展望は明るく数字の上でも問題は無いように思われます。
しかしながら現実に改修業者の声を聴いてみると、ここ数年マンション改修業界の状況は厳しくなっているということです。
どこに問題があるのか、又解決策は見つかるのかをこれから検証していく必要があります。

★建設業界の構造的問題

①労働時間が他の業界と比較して年間340時間長く、年間29日も出勤日数が多い。又週休2日を達成している企業はわずか5,7%に過ぎず、建設現場では更に厳しいと思われる。
②給与水準が近年上昇傾向にはあるが、製造業等他の業界と比較しても1割程度低い賃金水準となっている。
③建設業就業者数が若者離れ、高齢化等により1997年の685万人をピークに減少傾向が続き、2019年には27,2%減の499万人にまで落ち込み、人材不足が深刻化している。

厚生労働省「建設業の就業者が仕事を辞めた理由」実態調査によると

▼休みが取りつらい
▼雇用が不安定である
▼労働に対しての賃金が低い
▼遠方の作業場が多い
▼作業に危険が伴う等が挙げられている。

★課題と解決策

① 労働環境を良くするための「働き方改革関連法」が2019年より施行されていますが、建設業界は5年間の猶予があり、2024年から施行と先延ばしされました。そのため建設業界では、2024年までに様々な改善を実行していく必要がありますが、現場の実態を考慮すると早急な改革の実行が望まれます。
・ 長時間労働の状態化を改善するために「時間外労働時間の上限規制」が制定され「月45時間、年360時間」の上限が罰則付きで規定されます。
・ 正規、非正規社員といった雇用形態に関係なく「同一労働同一賃金」も適用対象となります。

② 建設業界では日給制が多いと言われていますが、休日が増えれば収入が減少します。就業者が安心して働くためには月給制を取り入れることを検討する必要があります。

③ 就業希望者を増やしたり、就業者の定着率を向上させるためには「職場環境の改善」も必要でありこれまでの「きつい、汚い、危険」といったイメージを、払拭させなければなりません。近年女性の就業者も増えていることから、特に現場の安全性と清潔保持は絶対条件となります。

④ 改修業界においては多能工の技術者(マルチクラフター)を育てることも人件費や職種の簡素化に繋がります。多能工は一人の技術者が二種以上の作業や工程に携わることができるため職種や工程が効率化できます。(例えば仮設工、塗装工、防水工等が一人の技術者で対応できる)※出典:国交省「マルチクラフター(多能工)を育成しよう」

⑤ 大手ゼネコンでは、既に生産性の向上を目指した取り組みとしてICT(Information and Communication Technology: 情報通信技術)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)等が活用されています。
以上、この問題を少しでも解消していくには、労働環境や労働条件を改善し、若年層の就業希望者が安心して働ける魅力ある職場づくりに取り組んでいく必要があります。

★建設工事費の今後について

改修用資材の価格は一部を除いて大きな変動はないようです。全体的な建設工事費の上昇については新型コロナウイルスの影響を心配していましたが、現状では平行線を辿っているようです。しかしながら建設業界の技術者不足が、今後益々深刻になっていくと共に、人件費の上昇が産業界全体にも影響を及ぼしており、資材の値上がりが予想されるという識者のコメントも聞かれます。

★最後に

「良質なマンションに100年住み続ける」ということは、適切な維持保全を計画的に継続していくことです。長期修繕計画に基づく定期的なマンション大規模改修工事に、質の高い技術者の施工精度と最良の材質による材料、工法は絶対条件です。
工事発注者であるマンション管理組合も、建設業界の健全な発展のために適切な工事発注を行う事により互いに協力していくことで、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む一助になると思います。

  記事提供 株式会社 松澤建築設計事務所 取締役会長 一級建築士 松澤 康博氏