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業務知識

マンション運営に経営感覚を

マンションの管理組合運営にも経営感覚を持ちましょう

はじめに
最近、管理組合によるマンションの運営については、「経営的感覚」を持ちましょう。とよく聞くようになりました。会社組織ではないし、事業をするわけではないのになぜだと疑問がわきますね。しかしあまり難しく考えないで進んでみましょう。
一般的にご家庭では、お給料や年金、事業をなさっているところは事業収入などの予定収入の範囲内で必要な支出を賄い、収支決算をされていると思います。そして、収入が大きければ剰余金ができて預金が増加し、逆に収入より支出が大きければ赤字になり、預金があればこれを取り崩し、預金で補充できなければ借り入れをしなければなりません。
これをうまくやりくりする、まさにこれが経営でありマンションでいえば管理費会計のやりくりです。これに少し将来に視線を据えて、何年後に子供の入学や、家の修理や電気器具の買い替えや部屋の間取り替え等が予測されることから、これも視野に入れて懸命に預金をなさっている。これがマンションでいう修繕積立金であり、両方を合わせて家庭の切り盛りをされているのではないかと思います。
こう考えるとこれそのものが家庭の経営なのではないでしょうか。
マンションでは、年一回の通常総会で年間まとめた事業報告と決算書、そして次年度の事業計画と予算書があり、手すりや配管等の鉄部塗装とか、外灯等のLED化をするのにいくらかかるとか、いくつかの案件が独立議案として上程されていることもあります。
これを見ると、収入は管理費・修繕積立金や駐車場使用料等の決まった金額であり、支出は植栽、エレベーター、外灯等の共用部分といわれるものの点検費や補修費、電気代等、また管理会社に管理を委託していればその管理委託費が毎年同じように計上されています。
このほかにも火災や地震の損害保険もありこの費用も必要です。

大規模修繕
そして、12年毎(国交省推奨)に建物の大規模修繕という工事があり、これにはたいそうな資金が必要になります。これは生活しながらの工事であることから、修繕委員さんたちが懸命に検討し、これを受けて理事会は総会に議案として上程し、承認を得て工事を実施します。これには長期修繕計画という25年~30年間をスパンとした計画があり、これには当然給排水管・設備やエレベーター等の設備の修繕も組み込まれており、いわゆる工事の予定表です。
この長期修繕計画は、建物や大きな設備等について、それぞれ一定の寿命を勘案し、個々の予算を集積してその時期に必要な金額を計上し、これに必要な資金を月々計画的に積み立てていこうというものが修繕積立金です。ここで必要な工事費に対して資金が不足する場合には、組合員が共有持分に応じて一時金として拠出するか、管理組合として金融機関から借り入れをするか決断を迫られます。戸建ての家でもこのようなことは同じではないでしょうか。

管理費と修繕積立金の関係
組合員から見ると、納入する管理費や修繕積立金は同じ家計からの出費ですからどちらが高い、安いではなく合計金額が問題になると思います。ところが第一の問題は管理組合が管理費として徴収している金額で管理費がすべてまかなえているかということです。管理費会計は収支がプラスであり次年度への剰余金が出ている決算書をよく見ます。
しかし、よく収入項目を見ますとここに駐車場使用料が組み込まれており、これを除くと赤字決算である実態がみえてきます。繰り返しますが管理費会計の出費は、管理費として徴収している収入の範囲内で賄うのが本来の姿と考えられます。
国土交通省標準管理規約でも、この考え方を次のように明記しています。
(使用料)第29条 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等にかかる使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。

管理費会計の項目と内訳
この管理費会計に計上されている項目は、共用部分の清掃費やエレベーター、外灯等の電気料金のほか点検や補修費等であり、これらの項目についてコストダウンの余地はないか、必要な量か回数か、項目ごとに検討することが大切です。この検討は①新しいやり方、方法がないか②この方法の初期投資はいくらか、そして回収期間はどれくらいか③同条件での見積にサービス状況も含めて比較検討。このようなステップは必ず踏んで決定しましょう。そして極力管理費収入内で賄えるようにして、不足分は徴収する管理費の改定(値上げ)に結び付ければ、組合員の皆さんのご理解「合意」はいただけるのではないでしょうか。

長期修繕計画と修繕積立金
次は修繕積立金です。
この設定根拠は、長期修繕計画です。長期修繕計画の目的は一般的に次のように考えられています。
①修繕の予定
②修繕積立金の設定根拠
③マンションの将来像についての合意形成の基礎
以上のように3つの目的がありますが、中でも②修繕積立金の設定根拠の面からとらえてみると、分譲当初の低い設定もあり、長期修繕計画で設定されている必要な金額に到達していないことで苦労されている管理組合が多いのも事実です。ここで先ほどの管理費会計を徴収管理費で賄うことができれば、駐車場使用料収入を修繕積立金に全額でなくとも一定額を繰り入れることで、先行きが少し見通せるようになります。
ここまで検討して不足であれば、修繕積立金の改定が必要になります。先ほど検討した管理費が不足であれば、修繕積立金の不足と合算して、総会に議案の上程になりますが、一挙に値上げする案は負担が大きいことから、2年~3年かけて1年ごとに改定金額と、徴収開始時期を一括決議する方法が組合員の合意を得やすいのではないでしょうか。この改定金額は共用部分の持分比等を基本に算出し、各区分所有者の衡平を図ることが大切です。

組合員の合意を得るには
ただし、このようなことを総会で決定する場合には、多くの組合員の賛成が必要であり、この合意形成が共同住宅であるマンションの課題なのです。そしてこの合意形成の強力な助っ人になるのが経営的考え方による管理組合運営の進め方すなわちPDCA管理サイクル[P計画、D実行、C評価、A改善]の理事会導入だと考えます。言葉を変えると、いくつかの案(仮説)を立ててそれぞれの長所・短所を整理して、計画時点の精度を上げていくことです。

修繕積立金が不足する場合のPDCAを考える
一事例として、築12年・50戸住戸専用マンションの事例を検討してみます。
現在の徴収修繕積立金月額 11,200円(140円/㎡)です。他に駐車場使用料は管理費会計に、全額収入としていました。そして、剰余金が一定金額に達した時に修繕積立金に繰り入れる仕組みで運用していました。この方法では修繕積立金が計画値として定まらないという悩みを抱えていました。
昨年大規模改修完了時設計監理者が作成し、理事会にて検討し、総会承認された長期修繕計画では、これからの25年間は、月額17,200円(215円/㎡)の金額が必要であることがわかりました。ここで目標値は決まりましたので、この差を埋めていく対策が必要です。
対策① 管理費関係のコストダウン月額20,000円(5円/㎡=20,000/80/50)

対策② 駐車場使用料から月額として、
※100,000円(25円/㎡=100,000/80/50)
※実質の処理は毎年決算時に1,200,000円の振替を行う

対策③ 修繕積立金の改定 180,000(45円/㎡=180,000/80/50)「ただし、この45円/㎡の改定は、来年度開始月から次のように段階的に改定する。」
2021年度開始月から80㎡の専有部分で月額2,000円(11,200円から13,200円へ増額)
2022年度開始月から80㎡の専有部分で月額1,600円(13,200円から14,800円へ増額)
結果戸当たりの成果①400円充当②2,000円充当③3,600円充当
2022年度から合計17,200円を計画的に積み立てることができる

 この中で成果②2,000円は、計画的に織り込むだけで実質の成果はないが、管理費の使用状態も計画的になり予算組み立ての精度が上がり、出費も見積比較をすることによりコストダウン等の成果が期待できます。

この課題解決の進め方についてPDCA

サイクル

業   務

注 意 点

P計画

(プラン)

①実情把握と目標設定

②管理費会計のコストダウン策

③使用料等の収入向上策

④徴収額改定案の作成

・長期修繕計画の必要金額と積立金の収支をグラフ化する
D実行

(ドウ)

①実情の広報(必要性を含めて)

②改善案の理事会確定と総会承認

③承認事項の実施開始について該当者に

事前連絡

・組合員に実情を知らせ

ベクトルを合わせる

 

C評価

(チェック)

①設定目標に対し、長期修繕計画の収支精査

②新長期修繕計画の総会承認

③明確な反対意見への対処はよかったか

・総会承認時は作成依頼者に補足説明を依頼することも考えられる
A改善

(アクション)

①組合員の合意形成に不足はなかったか

②5年毎見直し時の長期修繕計画の収支

・広報の在り方をブラッシュアップ(わかりやすく)

 

次に単独の工事についてPDCAの事例を見る。
ここで「鉄部塗装の実施について」をPDCAサイクルで追ってみましょう
(表-1) [事例として事業計画に計上項目として設定しているもの]

管理組合運営への展開
このように業務のステップは簡単ですが、大切なことは[P計画]時点で必要情報がどの程度整理されているかがポイントになります。初めから完璧には進みませんから、この課題(鉄部塗装工事完了)が終了した時点での反省点を次の課題[P計画]に織り込むことで、次回はより楽に進めることができます。標準化・定型化をして誰でもいつでも間違いなくやれるように手はずを決めておくことです。

サイクル

業   務

注 意 点

P計画

(プラン)

①範囲の確定及び施工時期の設定

②見積選定業者(複数社見積比較)

③施工業者選任

④広報(時期、部位、注意点、臭気、乾燥)

・決定業者との調整確定

・下地処理・安全管理

・支払時期

・居住者への協力要請

D実行

(ドウ)

①発注

②工事部位・範囲の確認、関係個所の養生

③施工 安全確認(資材保管状態、臭気、乾燥等)

・範囲の違い修正

・業者の意見も聞く姿勢

C評価

(チェック)

①中間・完成仕上がり確認

②居住者の苦情対処はよかったか

・他部位の汚れ、キズ等

 

A改善

(アクション)

①作業車の駐車位置指定が不明

②資材及び養生部分の撤去遅れ

次の課題の[P計画]に

織込む

管理組合運営は計画に基づく活動であり、会計は予算主義です。が、管理組合の予算書にしても、長期修繕計画にしてもその時点の見込みです。物品や工事、サービス等の内容や価格は常に変化しています。またこの価格は無数にある販売業者によっても、工事業者やサービス業者によっても異なりますから、高額になるほど同条件での見積比較を念頭に置いて行動することが大切です。管理組合運営で会計の面では、組合員の皆さんが納める大切な管理費・修繕積立金等で賄われます。このお金を有効に大切に使うことは当然です。

これが経営的感覚の第一歩ではないでしょうか。そしてこの進め方にPDCA管理サイクルを使って担当役員の業務遂行負担を軽くしていくことができると考えています。
年間の活動計画もこの考え方を取り入れPDCAの[A改善]を繰り返すことにより、マンション管理は進化していくのではないでしょうか。
毎年総会議案として上程される、事業報告・決算報告や次年度の事業計画・予算の関係を見てもこのPDCA管理サイクルを取り入れてはいかがでしょう。
年一回の通常総会で上程される「次年度の事業計画案及び予算案」・・・・[P計画]
この計画に従って業務を執行する(他の個別案
件も同様) ・・・・・・・・[D実行]

大きな変更や追加事項、無駄はなかったか。監事の監査。・・・・・・・・[C評価]
反省点を次の計画に改善点として織り込む。もっと簡潔にする・・・・ [A改善]

むすび “標準化・定型化で管理を楽に”
PDCA管理サイクルは、昭和30年代に工場のモノづくりの品質管理手法として導入され、当時はQCサークル(品質管理活動)として全国的に活発な活動が展開されていましたが、これが会社の経営全般に役立つものとして認知度が上がり多くの会社経営に採用されたものです。
ここでも大切なことは「現場・現物・現実」の三現主義が考え方のベースであることは当然であり、現実を直視して計画を組み立てることが前提です。
予算主義のマンション運営にはこのPDCAサイクルは効果を発揮すると考えます。そして、[P計画]を[S計画](Standardize)にすなわち標準化して計画段階の組み立てをより確実にし[PDCA]から[SDCAサイクルとして] として、展開していくことでマンション管理も渦巻き状に向上(スパイラルアップ)していくと考えています。この標準化を進め、さらに定型化する考え方が、ご苦労なさっている理事会役員さんの活動を簡単に、楽にしていくことは間違いないと考えています。ぜひ、貴マンションの管理運営に取り入れてみてください。