管理費の回収が困難な時はどう対処するのですか?

Q 管理費の回収が困難な時はどう対処するのですか?
1.必ず回収できる。

法律のしくみのうえでは、管理費はかならず回収することができることになっています。

修繕積立金もおなじです。区分所有者に当面資力がない状態であっても、その区分所有者はとうぜんですが、専有部分として区分所有権を持っています。そして、その部屋の区分所有権が、とうぜんに管理費と修繕積立金の担保になっているからです。

その部屋の区分所有権は、その専有部分と敷地の共有持ち分から成り立っていますが、その区分所有権が譲渡されたりして第三者に移転しても、それにともなってその第三者はそのまま滞納管理費等の支払い義務を負担することになっています。あたかもその部屋の区分所有権といっしょに、その部屋の滞納管理費の支払い義務もその第三者に移転する、という状態になるのです。

2.裁判手続で請求する。

区分所有者の管理費支払い義務は、管理組合の立場から見ると、管理費請求権です。この管理費請求権があるかないかは、最終的には裁判上の請求によって確かめることができる、というのが法律のしくみです。

この管理費請求権の消滅時効の期間は5年です。裁判所の判決で管理費請求権の存在が確かめられますと、その時効期間は更新されて、その更新の時から10年になります。

この裁判上の請求は、かならずその区分所有権者本人を相手方としなければなりません。

3.相手の住所を確かめる。

裁判ではかならずその滞納者本人を相手にしなければなりませんので、その滞納者がそのマンションから出て行ってしまっておれば、まずはその転居先を突き止めなければなりません。

その場合は、マンションに住んでいたときの住民票の登録の内容を調査するというのが、ふつうのやり方です。福岡市内でしたら、住所地の区役所の住民登録の係に行って、その滞納者の住民票の写しの交付を請求するのです。

その交付請求をしに行く人は滞納者本人ではありませんから、どういう理由で交付請求をするのかの説明を、その区役所の係の人にしなければなりません。自分はその滞納者が前に住んでいたマンションの管理組合の役員だという説明をするのです。

すでに登録から除かれた住民票の記載のなかに、予定の転居先の住所が書いてあれば、おそらくその住所が新しい住所です。転居先住所の届け出がないときには、その住民票の除票の記載からは、滞納者の現住所はわかりません。

そのときは、その滞納者の本籍の役所に戸籍附票の交付請求をして、現住所を探しだすというやり方をします。戸籍を管理する本籍地の役所は、戸籍の附票というしくみを用意しています。戸籍の附票には、どこに住民登録があるかが書かれているのです。

ですから、転居先不明の人の行先をさがすために区役所で住民票の交付請求をするときは、その住民票写しに本籍地の表示をしてもらうようにするのです。滞納者が住民登録をそのままにしていて、行方がまったくわからないということもあります。そういうときは、裁判手続きは公示送達という特別の手続きで行います。公示送達というのは、相手に送る書類を裁判所の掲示板に2週間掲示することで、相手に届いたとみなすという方法です。

中島繁樹 弁護士著「マンション管理の法律入門」より