ADRのご案内

ADRとは

ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、「裁判外紛争解決手続」のことです、紛争を訴訟により決着をつけるのではなく、訴訟以外の話合い、例えば、調停や仲裁で解決を図る手続きのことをいいます。

ADRは、2007年4月1日にADR法が施行されて以来、脚光を浴びてきました。それは、訴訟が時間や費用かかるだけでなく、訴訟を避けようとする国民性もあり、一般市民からは、あまり利用されない、あるいは利用し難い制度であるのに対して、ADRは、その問題点を解消しているからです。しかし、これまでは、紛争解決を誰に頼めばよいか、また、仲介に立つ側からいえば報酬の関係で弁護士法に抵触することもあり、裁判所で行われる民事調停や家事調停以外はあまり利用されていませんでした。

ADR法は、これを解決した法律なのです。民間で和解の仲介を行おうとする事業について、法務大臣が「公正かつ適正に実施され、かつ、専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図るもの」と認証する制度が誕生したのです。そうして、この「認証ADR」を利用しますと、時効の中断など法的効果も与えられ、社会的信用も増してきます。

福管連がADRを行う理由

福管連では、毎年度2千件を超えるマンション関係の相談を受けています。内容は、管理運営関係、法規関係、修繕関係などマンション問題のすべてにわたっています。

この相談には、騒音、ペット飼育、滞納など組合員同士の問題や建物の不具合、管理委託サービスなどマンションを巡る業者との問題も含まれています。これらの相談について、これまでは、相談に来られた方に解決に向けてのアドバイスを行ってきましたが、さらに一歩進めて、相手方も同時に来ていただき、福管連が間に入って調停を行えば、より早く、相互に納得できる解決ができるのではないかと考えました。業者の方も、福管連の今までの公平・中立・専門的立場での活動を信頼して、調停には参加していただけるものと考えます。

このような理由から、福管連では、マンション問題解決事業についてADR法に定める法務大臣の認証をいただいて、「認証紛争解決事業者」として調停を行うことを総会で決議していただき、法務大臣に認証を申請いたしました。

そうして、厳格な審査もありましたが無事にパスし、2008年12月24日(水)、法務大臣から、マンションにかかわる民事上の紛争(家事・労働関係を除きます。)について、ADR法に定める認証紛争解決事業者として和解手続を行うことを認める認証をいただきました。

福管連では、この事業を行うために「マンション問題解決センター」を設置しました。ここへ調停手続の申立をしていただくことになります。調停には、マンション問題に詳しい弁護士、一級建築士等が調停員となり、迅速・円満な解決を目指します。

マンション問題解決センター利用のメリット

マンション問題解決センターの利用は、次のようにマンション問題解決に最適です。

▼手続きが簡単

訴訟では、請求の趣旨や理由等を法律や判例を踏まえて緻密に記載した書面や証拠書類を提出する必要がありますが、マンション問題解決センターへの申立は、解決を求める事項と事実関係の概要を書いていただけば、申立書は受理されます。後は調停の場において、弁護士を含む調停員が丁寧に事実や双方の意見を聞き、法律的な問題点を整理し、和解の提案もします。

▼専門家の知識経験を活かした公平な解決

マンションは、民法と異なった法律や判例があります。また、建築等に関する専門知識・経験も必要です。マンション問題解決センターでは、マンション問題に精通した弁護士や一級建築士等専門家が調停員となりますので、その知識や経験を活かして、公平に、実態に応じたトラブルの解決を図ることができます。

▼柔軟な解決

マンションは、皆が同じ屋根の下に住んでいますので、判決による一刀両断的な解決は不向きです。勝っても負けてもしこりが残ります。マンション問題解決センターでは、当事者の事情や意見なども十分述べていただき、法的な権利や義務の解釈にとどまらない柔軟な解決を図ることができます。

▼迅速な手続き

裁判は、時間が掛かり手続きが複雑ですが、マンション問題解決センターでは、1回当たりの期日に時間をかけ、全体では長くても3ヶ月終了を目途として、迅速に手続を進めます。

▼プライバシーや秘密の保護

裁判は公開が原則ですが、マンション問題解決センターは非公開です。当事者のプライバシーや業務上の秘密が保護されます。

▼法的メリット

マンション問題解決センターの手続を利用した場合には、時効中断、当事者間に訴訟が係属している場合の4月以内の訴訟手続の中止、借家・家事問題等の調停前置主義が適用されないなどの法的効果が認められています。

▼安い費用

マンション問題解決センター利用するときの費用は、次のとおりです。比較的安い費用ですから、訴訟のように費用が原因であきらめる必要はありません。

  • 調停申立費用 ・・・ 申立人 1万円
  • 調停期日費用 ・・・ 当事者ごと 1期日5,000円
  • 和解成立の場合・・・紛争の価額に応じて2%~5%の和解成立費用(原則当事者折半)なお、紛争の価額の算定が困難な場合は、運営委員会において、諸事項を勘案の上100万円以下の額を紛争の額として定めます。(原則として当事者で折半)
  • マンション問題解決センター以外での場所の調停期日開催、調査は別途費用

マンション問題解決センターにおける調停について

1.マンション問題解決センターが行う「調停」とは

マンション問題解決センターでは、「調停」を行います。
「調停」とは、申立を行った方と申立を受けた方との間の意見の食い違いに対し、和解が成立するように、当事者間の話し合いの場に調停員が臨席し、公平な第三者として助言等を適宜することによって、当事者が円満な和解に迅速に到るようにする手続です。
当会の手続きでは、前にも述べましたように

  1. 当事者のプライバシーや、営業上の秘密などに配慮し、手続の状況や内容を公開せず、トラブルの解決を図ることができます。
  2. 当事者の事情や意見なども考慮し、柔軟な解決を図ることができます。
  3. トラブルの種類や内容に応じて、簡易迅速に手続を進めることができます。
  4. マンショントラブルに関係する分野に精通した弁護士・一級建築士・マンション管理士等専門家の知識経験を活かしたきめ細やかな解決をはかることができます。

などの特徴があります。

裁判外の手続ですから、裁判所が行う和解と異なり、和解契約そのものに強制執行力はありません。
しかしマンション問題解決センターは、「裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律」により、認証を受けた団体ですから、マンション問題解決センターの手続に沿って和解が成立すると、その和解契約には、時効の中断効が認められますし(和解が成立しないことを理由に手続が終了した場合にも、一定の条件で事項の中断効が認められます。)、訴訟中であれば、訴訟手続を中止する旨の決定を受けることができます。
また、調停の前置に関する特則もあります。

2.紛争の当事者が支払う報酬又は費用に関する事項

  1. 調停申立費用
    申立人が支払う調停申立費用は、1万円です。
  2. 調停申立の取り下げの場合の料金の返還
    被申立人が手続に応諾せず一度も期日が開催されず手続が終了した場合は、納付された申立費用の半額を申立人に返還します。
  3. 期日費用
    当事者は、センターに対し、各自手続期日の開始前に期日費用として、5,000円 納付してください。
  4. 当事者が負担すべきその他の手続費用
    当事者は、申立費用、期日費用の他、調査費用、センター事務室以外の場所で調停期日を開催した場合の調停員の交通費、日当、宿泊費を納付してください。
  5. 予納と手続終了後の清算
    当事者は、(4)に定める費用に充当するため、マンション問題解決センターの定める金額を定める方法に従い、その定める期間内に納付してください。
  6. 当事者から、[1] [3] [4] 及び [5] の金銭の納付がない場合。
    当事者が [1] [3] [4] 及び [5] に定める金銭の納付をしないときは、マンション問題解決センターは、調停手続を停止または終了することができます。
    ただし、[4] の金銭に限り、一方の当事者が、他方の当事者支払うべき分についても納付したときは、この限りではありません。
  7. マンション問題解決センターへの金銭の支払方法
    銀行口座へ振込または福管連事務所へ現金で支払ってください。

3.調停手続の開始から、終了にいたるまでの標準的な手続の進行

  1. 事前相談
    マンションに関する問題について、マンション問題解決センターの手続を利用することをお考えの場合、マンション問題解決センターにお問い合わせくだされば、調停手続について説明します。
  2. 紛争の内容
    マンションに関する問題について調停を行います。
  3. 調停の申立
    調停を申し立てるときは、次に掲げる事項を記載した申立書をマンション問題解決センターに提出してください。(福管連事務所に用意しています。)

      • 当事者の氏名又は名称並びに住所及び連絡先
      • 代理人を定めた場合はその氏名並びに住所及び連絡先と申立人との関係
      • 申立の内容及び紛争の概要

    代理人よって調停手続きを行ときは、申立書にその旨記載してください。

  4. 調停の申立の受理とその通知
    ① マンション問題解決センターは、申立人が上記(3)に適合した申立書を提出し、申立が受理されたら、被申立人に対して、調停申立があったことを通知するとともに、調停手続について説明を行った上で、マンション問題解決センターの調停手続に参加するか否かについての意思を確認します。
    ② 被申立人がマンション問題解決センターの調停手続に参加するか否か返事がない場合、参加しないという返事があった場合又は調停応諾料金を納付しないときには、その旨を付記して調停申立書を申立人に差し戻すとともに、納付された申立費用の半額を申立人に返還します。
  5. 調停員の選定手続
    調停の申立が受理されたら、調停員候補者名簿から調停員を選び当事者に通知します。
    当事者は、通知受領後7日以内にマンション問題解決センターに対し、忌避(調停員としてこの問題にかかわれば、問題解決の公正性が疑われるおそれがある場合)の理由がある場合は、忌避申立書を提出してください。
    忌避の申立書が7日以内に届かなければ、マンション問題解決センターは、その当事者は、調停員候補者について特に意見はないものとして取り扱います。
    忌避の理由があると当事者より指摘された場合は、マンション問題解決センター運営委員会において審議し、忌避を判断します。
    忌避に理由がないという委員会の判断に関しては、1回に限り当事者は異議を申し立てることができますが、理由があるという委員会の判断に関しては、当事者は異議を申し立てることはできません。
  6. 調停手続
    1. 調停員は、当事者双方の主張を聞き、当事者の一方又は双方に助言をするなどの方法で円満な解決に到るように努めます。
    2. 調停員の中に一人は必ず弁護士がおりますので、法令の適用解釈等の専門的知識に基づき助言を得ることができます。
    3. 調停員は、いずれかの当事者の要請がある場合には、適宜の時期に当事者に解決案又は見解を提示することができます。
  7. 調停手続の終了
    • ① 調停手続は、原則として、第1回期日より3カ月以内に終了します。ただし、当事者間に別段の合意があるとき又はセンターが必要と認めたときは、その期間を延長することができます。
    • ② 調停手続は、次の事由により終了します。
      1. 和解が成立したとき
      2. 調停員が和解の成立の見込みがないと判断したとき
        • ア)一方の当事者が和解をする意思がないことを明確にしたとき
        • イ)当事者間の主張の隔たり大きく、歩み寄りの姿勢が見られず調停手続を継続することが困難であると判断したとき
        • ウ)直ちに和解が成立する見込みがなく、かつ、事案の性質、当事者が置かれた状況等に鑑み、調停手続を継続することが、一方または双方の当事者に対し、和解が成立することにより、通常得られることが期待できる利益を上回る不利益を与える蓋然性があると判断したとき
        • エ)ア~ウに掲げるほか、調停員会が当事者間に和解が成立する見込みがないと判断したとき
      3. 第1回期日より3カ月以上期間が経過したとき
      4. いずれかの当事者が調停員に対し、調停手続の終了を書面により要請したとき
      5. その他の終了
          ア)一方または双方の当事者が出席調停委員の指揮に従わず、調停手続の継続が困難であるとき

        • イ)当事者が不当な目的で調停手続の申立をし、又は依頼をしたとき
        • ウ)申立に係る事案が和解に適しないとき
        • エ)一方又は双方の当事者がセンターに納付すべき費用を納付しないとき
    • ③ 当事者間で和解が成立した場合、調停員は、当事者間に和解契約書を作成させた上で、和解契約成立の立会人としてこれに署名押印します。和解契約書は当事者の数に一を加えた数の原本を作成します。そしてマンション問題解決センターは、この和解契約書の原本一通を和解契約を締結した日から10年を経過する日まで保管し、当事者の要請、裁判所の命令その他適切な場合には、その写しを交付します。

4.守秘義務

  1. 調停手続は、非公開です。ただし、マンション問題解決センターは、調停手続の結果については、当事者の承諾を得て、当事者の特定ができないような形で、事案の概要、解決方法等を公開することができます。なお、統計的な数字については当事者の承諾を受けないで公表することもあります。
  2. 調停員、マンション問題解決センター運営委員、特定非営利活動法人福岡マンション管理組合連合会職員、当事者及び代理人その他調停手続に関与するものは、当事者間に別段の合意がある場合を除き、調停手続き中及び手続後に、調停手続に関する情報を他に漏らしてはなりません。
  3. いずれの当事者も、調停手続において相手方当事者が提出した主張又は表明した見解、調停手続において相手方当事者によりなされた自白、調停員の示した提案及び相手方当事者が調停員の提案を受け入れる用意のあることを表明したという事実を、調停手続に付託した紛争と関係するものであるか否かを問わず、訴訟手続において、証拠として提出すること及びそれらに基づき主張をしてはなりません。

5.調停員、マンション問題解決センター、その運営委員、職員の免責

調停員、マンション問題解決センター、マンション問題解決センターの運営委員及び職員は、故意又は重大な過失による場合を除いて、調停手続きに関する作為又は不作為から生ずる損害等に対して、何人に対しても責任を負いません。

手続きの進行

詳しくは福管連事務局までお問合せ下さい。
TEL 092-752-1555 FAX 092-752-3699 E-mail formmail@fukukan.net