管理組合理事長の職を理事会で解任

最高裁判所は、平成29年12月18日、管理組合理事長の解任の方法について、次のように判決しました。

理事を組合員のうちから総会で選任し、理事の互選により理事長を選任する旨の定めがある規約を有するマンション管理組合において、その互選により選任された理事長につき、理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができる。

この判決は、この問題に決着をつけた最高裁の新判例として、その日の夕方のテレビニュースでも報道されましたし、次の日の朝には全国の新聞で詳しく解説されました。翌月の1月15日付の「裁判所時報1690号」にも掲載されました。

1 事案の概要

この事件の対象となったのは、福岡県久留米市にある久留米Xマンションの管理組合です。専有部分159戸の築6年のマンションです。

平成25年当時、このマンションでは管理を委託する先の管理会社の選定問題で、理事長とその他の理事とで意見の対立がありました。

このマンションの管理組合では、平成25年10月に理事会(理事数14名)を開催したのですが、当時の初代理事長A氏は突然欠席しました。そこで出席した理事だけで理事会が開かれたのですが、この理事会でA氏の理事長職を解任し(A氏はふつうの理事になります。)、あわせて理事のB氏を第2代の理事長に選任したのです。

A氏は、この理事長解任について異議を言うことになりました。A氏は翌年10月、管理組合を被告として福岡地方裁判所へ提訴しました。私が管理組合の依頼でこの訴訟を担当することになりました。

2 訴訟の経過

<第1審> 福岡地方裁判所久留米支部

平成26年10月2日  A氏が、総会決議無効確認等請求の訴を起こしました(被告は管理組合)。

平成28年3月29日  判決言渡しがありました(被告管理組合が、敗訴しました)。

<第2審> 福岡高等裁判所

平成28年4月13日  管理組合が控訴を提起しました。

同   年10月4日  判決言渡しがありました(控訴人管理組合が敗訴しました)。

その判決の内容は次のとおりでした。

<「理事長、副理事長、会計担当理事および書記担当理事は、理事の互選により選任する」との役員互選の規定は、理事長という役職の選任は理事会の決議で行うとの意味であり、一旦選任された役員を理事会決議で解任することは予定されていないものと解される。したがって、一審原告の役職を理事長から単なる理事に変更することを内容とする理事会決議は無効であり、これと一体としてされた新理事長の選任の決議も無効である。>

しかし、このような判断内容は、全国のマンションで行なわれている慣行に反しますし、管理組合としては、とうてい受け入れることができないものです。

<第3審> 最高裁判所

平成28年10月18日  管理組合は、上告受理申立をしました。

同   年12月13日  管理組合は、上告受理申立理由書を提出しました。

平成29年10月19日  上告受理する決定がありました。

同   年11月30日  口頭弁論が開かれました。

同   年12月18日  判決言渡しがありました。

その判決の内容は冒頭記載のとおりでした。管理組合の考え方どおりでしたし、全国のマンション管理組合にとっても、当然の内容であったはずです。

3 教訓

この訴訟の経緯、及び最高裁判決から得られる教訓は次のとおりです。

マンション理事会は、互選で多数決によって理事長を選任することができるし、また同じく理事会の多数決で解任することができる。このことが、最高裁判所の判決で確認された。
理事長を解任する場合、その人が欠席していてもかまわないが、その理事会が開催されることについて、その人が事前に通知を受けていたことを、記録として残しておかねばならない。
理事長を互選で選任する時期は、総会で新理事が選任されたら間を置かず、すぐに新理事会を開いて、新理事長を選ぶべきである。

できれば新理事が選任された総会の直後に新理事長を選ぶべきである。そうすると、前理事長を解任するという問題は起こりようがなくなる。