<耐震強度偽装特集>
建物の安全性確保のための建築基準法等改正が成立


― 耐震強度不足、名義貸しなどの罰則を大幅に強化 ―
 耐震強度偽装事件の再発防止対策を目的とする建築基準法、建築士法など4法改正が6月14日参議院で可決され成立しました。公布から1年以内に順次施行されます。主な改正項目は、次の6項目です。しかしこれで終わりではなく、まだまだ問題点が大幅に残っています。秋の臨時国会に向けて、欠陥住宅被害者救済、賠償保険強制加入、専門建築士の資格創設などが課題となります。

  1. 建築士に対する罰則を大幅に強化

    違 反 内 容
    現 行 罰 則
    改 正 罰 則
    耐震基準など重大な実体規定違反
    (建築基準法)
    罰金50万円 懲役3年/罰金300万円
    (法人は罰金1億円)
    建築士・事務所の名義貸し/
    建築士による構造安全性の虚偽証明
    (建築士法)
     な し 懲役1年/罰金100万円
    不動産取引の際の重要事項不実告知等
    (宅建業法)
    懲役1年/
    罰金50万円
    懲役2年/罰金300万円
    (法人は罰金1億円)


  2. 県・市などの特定行政庁に対して、設計図書の保存を義務付け

     今まで規定がなかったのを義務付けたものです。ただし、管理組合としては、民間の建築確認機関、建築士などの設計図書の保存期間5年を大幅に延長し、建物が存続する限り保存を義務化することを要求します。

  3. 宅建業者に対し、瑕疵担保責任等保険加入の有無を購入者へ説明義務付け

     売買契約締結前に、宅建業者から購入者に対して、住宅売主の瑕疵担保責任履行に関する保険加入の有無等の説明を義務付けました。しかし、被害者救済のためには、保険加入の有無を説明するだけでは不十分であり、フランスのように保険への強制加入を採用すべきです。

  4. 建築確認・検査の厳格化(ピアチェックと中間検査の実施)

    (1) 鉄筋コンクリートの場合、高さ20メートル以上の建築物は、知事指定の専門家による審査(ピアチェック)を義務付けしました。しかし、20メートルでは7階建て程度以上となりますが、3階建てからチェックは必要と考えます。また、大臣認定プログラムを使えば審査を簡略化できるようですが、これでは今回の偽装事件の失敗を重ねるおそれがあります。

    (2) 3階建て以上の共同住宅には中間検査を義務付け
      今まで地方自治体の裁量に任されていた中間検査を義務化しました。

  5. 指定確認検査機関への指導監督の強化

    (1) 日本ERIなど民間指定確認検査機関に対して、特定行政庁(県や建築主事を置いている市のこと)が立入り検査をしたり、指定権者が業務停止命令を出すことができることとしました。

    (2) 確認検査機関として指定する場合の要件を強化しました。たとえば、損害賠償能力があるか、人員体制は充分か、出資者に業務上関係が深いものがどの程度含まれているかなど指定要件を厳格化しました。

  6. 建築士、建築士事務所、指定確認検査機関の情報開示

    (1) 処分を受けた建築士の氏名及び建築士事務所の名称等の公表
      氏名の公表だけではなく、構造専門の建築士の独立資格の創設など、今回の偽装事件の発生原因に遡り、再演を防止できる新制度を創設すべきでしょう。

    (2) 指定確認検査機関の業務実績、財務状況、監督処分の状況等の情報開示徹底
      当然指定確認検査機関の情報は開示すべきですが、県や市においても耐震偽装を見逃しています。この対策が洩れています。

<耐震強度偽装ニュース>

● 耐震強度偽装マンションの建替え、管理組合総会で可決
 元一級建築士姉歯秀次被告が耐震強度を偽装したグランドステージ池上(東京都大田区・9階建て24戸)では、6月24日(土)総会を開催し、マンションの建替えを区分所有法の要件である議決権及び区分所有者数の5分の4以上の賛成多数で可決しました。

 建替えに伴う区分所有者の負担は、平均1250万円とのことです。総事業費は8億円、取り壊しや建設費への公的助成や建物内に公共の集会室を設けて大田区の助成を活用し、住戸数を2戸増やすなどして住民負担額を当初の試算より2/3から半額程度に抑えることができたそうです。再建計画は、地元のNPO法人が大田区の委託よりとりまとめました。

○ 耐震強度偽装被害マンションの区分所有者が川崎市などに損害賠償請求
 川崎市川崎区にあるマンション「グランドステージ川崎大師」(23戸)の全区分所有者は、川崎市、元一級建築士姉歯秀次被告、設計元受のスペースワン建築研究所(清算手続き中)、施工業者太平工業(東京都中央区)などを、総額6億円の建替え費用等を求めて、近く損害賠償訴訟を起こす方針を決めた模様です。

 川崎市に対しては、平成17年6月の最高裁判決を根拠として検査確認機関「イーホームズ」(指定取消し済み)が強度不足を見逃した責任を川崎市に問うものです。
▼グランドステージ川崎大師
日経アーキテクチャーより

● 小嶋社長ら3人を起訴、総研の詐欺容疑は立件断念で捜査は終結か?
 6月7日、東京地検はヒューザー(東京都大田区、破算手続き中)の社長小嶋進容疑者を詐欺容疑で起訴、木村建設の木村盛好被告を詐欺罪で、姉歯秀次被告を建築基準法違反の罪で追起訴しました。

 しかし、経営総合研究所(総研)(東京都千代田区)の関係者の詐欺容疑の立件は断念する模様です。今後姉歯容疑者の偽証容疑の立件したうえで、偽装事件の一連の捜査は終結する見通しです。


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