築4年のマンションに大被害、築30年マンションは無傷

― 分譲マンションの被害状況と問題点 ―

▲築4年のマンションのせん断亀裂
全壊は免れた!
 今回の分譲マンションの被害は、内外壁の大きなX型のせん断亀裂、タイル・コンクリート壁・庇の落下、玄関扉・窓・サッシュの変形・開閉不能、家具倒壊、ガラス破損、敷地陥没等です。全壊を免れたのは不幸中の幸いでした。
警固断層沿いに多くの被害
 地域的には、福岡の中心部である中央区から南区にわたって大きな被害が発生しました。
 詳細を見ると、警固断層が走っている中央区の大名・今泉・平尾地区から南区の高宮地区までの南東方向に被害が相次いでいます。ただし、専門家の間では警固断層と地震との関連を否定する見解もあり、この点は今後の分析結果を待たざるを得ません。
 百道浜(早良区)や愛宕浜(西区)の埋立地では砂や泥が地中から噴き出る液状化現象が続いていますが、マンションへの影響は明確でありません。

築4年マンションに大被害、築30年マンションは無傷
 被害が大きい同じ大名・今泉地区でも、並んでいるマンションで一棟は被害が発生し、他のマンションは被害が発生していないといった現象が生じています。しかも、損傷したマンションは、竣工後4年〜7年の建物であり、隣りの無傷の建物は、築30年です。本来、1981年以降に建築確認のマンションは、新耐震基準で設計されており、大きな被害は出ないはずです。それが被害にあっています。これは、新耐震基準が非構造壁は壊れてもやむを得ないと考えている点にも原因がある疑いがあります。新築マンションを買った者にとっては、非構造壁でも壊れては困るのです。

 阪神大震災では、昭和初期に建築された小学校の被害はなく、戦後の建物に被害が多かったといいます。耐震基準自体の見直しも必要ではないでしょうか。建築学会の見解によりますと、新耐震基準は「100年に一度来るか来ないかの大きな地震に対しては、建物の被害が出るのは止むを得ないが、人に被害が出ないことを目標にしている」そうです。居住者(消費者)の感覚からは、納得できません。

 被害の原因が分からないまま推移すれば、分譲業者・施工業者の責任が曖昧になり、復旧費用は、すべて、管理組合(区分所有者)が全額負担しなければならなくなります。行政や研究機関では、なぜ築4年〜7年のマンションが数多く被害に遭ったのかをぜひ解明していただきたい。

役に立たない?地震保険
 福岡のマンションの被害は、一部損傷が多かったのですが、これに対して地震保険の保険金は出ないと鑑定される事例も少なからずあり、「折角地震保険に入っていてよかったと喜んでいたのに役立たずであった」との声も数多く聞かれました。

 これは、建物の地震保険では、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)に損害が発生しないと保険金は支払われない仕組みになっているからです。構造上重要でない間仕切壁や手摺壁、玄関扉、屋外階段等の被害では、保険金は出ないのです。高層マンションに多い鉄筋コンクリートラーメン構造では、柱と梁が主要構造部であり、それ以外の部分は入らないのです。

 しかし、地震保険は全く役に立たないわけではありません。阪神大震災のような全壊・半壊や地震に伴う火災では保険金が出ます。地震保険は、一般の損害保険のように被害に応じてきちんと出るものではなく、いざというときに復興資金の50%程度は出るといった程度の期待を持っておけば腹も立ちません。
 居室内の地震保険(建物・家財)は、緩やかな運用がなされている事例も多く、予想以上に保険金が出る場合も見受けられます。

ダブルローンの悩み
 復旧費用を管理組合が負担しなければならないとした場合、すでにある積立金で賄うことが可能な管理組合は多くありません。また、高齢社会に入っている現在、一時金の負担も困難です。借入れで対処するにしても、今後返還しなければならず、築4年〜7年マンションの居住者では、30年の長期間、ダブルローンを支払わなければならないことになります。

 低利融資も必要ではありますが、福岡市でも、これまでの大地震で他の地方自治体でとられたような一部損壊に対しても補助金を出すことをぜひ実施していただきたいと考えます。

築4年等若年マンション破損に業者責任はないのか?
 築30年マンションが無傷で、築4年〜7年のマンションに被害が発生しましたが、これらのマンションの分譲業者、施工業者に責任がないかどうか。

 地震が原因だからといって、すべての被害に免罪符が与えられることはありません。設計・施工に問題はなかったか、販売時に充分説明責任を果たしたかなど、民事上の責任の有無は、地震保険の保険金支払基準や新耐震基準適合性と別個の問題と考えます。分譲業者等の誠意ある対応が望まれます。

 また、基本的には、瑕疵あるマンション販売の防止対策として米国カリフォルニア州で実施しているようなパブリックレポート制を導入し、新規分譲時点から、中立の専門家によるチェックを受ける体制が必要です。
 さらに、今回の地震にしても、日常のマンション管理にしても、紛争が発生した場合、裁判外において、迅速に責任の有無を判定する中立の紛争解決機関(ADR)の設立が望まれます。


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