管理組合の「広報」は合意形成の第一歩

“組合員は知りたいのです。役員は知らせる努力をしましょう”

1 総会議案書で初めて議題を知った。
管理組合の活動は一般的に、まず年一回の通常総会にて前年度の事業や決算の報告を行います。そして新年度の事業計画(案)と予算(案)の説明をして区分所有者皆さんの承認をいただくことから始まります。通常はこの総会で、理事会が検討作成した新年度の事業計画案及び予算案について、質疑を受け承認にこぎつけるわけですが、組合員にとっては総会の1~2週間前に届く総会議案書で初めてその内容を目にします。管理組合によっては理事会の内容(理事会議事録)を掲示板等に掲示されており、これをよく見ておけば総会の議題が理解できるかもしれません。しかし、理事会の議事録を見ていても総会の議案書とのつながりは、強い関心を持って観ていなければ一般的になかなか解りづらいものです。

2 区分所有者のマンション管理への関心が必要
区分所有者は、自分の大切な資産である住居や店舗そして共有持ち分である敷地や廊下や階段、エレベーターの管理について本当に無関心でいられるとは考えられません。そこには組合役員や管理会社を信頼していればこそ、日常の多忙さもあり、お任せ状態になっているのではないでしょうか。

3 管理組合役員と組合員の関係
理事会を束ねる理事長は、法人以外の管理組合では、区分所有法に定める「管理者」とされ、「管理者」は組合員との委任契約とされています。(区分所有法第28条)
ちなみに、民法643条 (委任契約の意味)では、次のように規定されています。
「委任契約は依頼する者(委任者)が委任を受ける者(受任者)を信頼して法律行為をするなど事務を処理することを依頼し、受任者がこれを引き受けることによって成立する契約である。」と規定されています。
さらに民法645条 (受任者が負う報告義務)には、「受任者は、委任者の請求があったときは、いつでも委任された事務の処理状況を報告しなければならない。また、委任契約の終了した後は、できるだけ早く事務内容の結末を、報告しなければならない。」とこのように規定されており、これを受けて、区分所有法第28条(委任の規定の準用)は、「この法律および規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う」としています。区分所有法では、第43条(事務の報告)で「管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。」としていますが、これが冒頭に申し上げた通常総会なのです。

4 総会への関心盛り上げ
年1回の通常総会は、理事長が報告(役員が分担)と議案の説明について、組合員が各々の立場で、質問し意見を述べ理解を深めた結果、議案に対する賛否の意思決定をする場なのです。ですから、
① 事業計画推進の状況
② 議案上程に至る経過
③ 修繕積立金不足等の課題改善の提起
④ 役員の実際の活動状況等の話題を、定期的に広報紙として発行することができれば組合員の関心は高まり、総会の実参加者が増加するなどの成果も期待できるのではないかと考えます。

5 広報紙一事例の紹介
広報紙の一事例を観てみます。この管理組合広報紙は、定例理事会の検討課題を中心に挿絵や写真を加えて見やすくしており、文章表現も平たい口語体で書かれています。ちょっと立ち読みでいいような内容ですが、毎月掲示板に掲示するとともに、全戸及び非居住の組合員にも配布されています。また、非居住の組合員からは、組合協力金を徴収していますので、一定の役割は果たしているようです。
これはほんの一事例ですが、役員は組合員の信頼がベースです。この信頼を維持するためには、情報を公開し、話題を共有化することが必要ではないでしょうか。いわゆる透明性の高い開かれた管理組合運営にしていくことです。

6 広報紙作成のポイント
皆さんに読んでいただく文章を書くことは、なかなか難しいことではあります。しかし、この事例を見ても、理事会の話題を簡潔に個条書きにしただけのようです。これを中心として、季節や時事話題に少し触れ、最後にご挨拶を添えるということでいかがでしょうか。ただし、管理組合としてパソコンが必要ですね。写真は携帯電話やスマートホン等の写真機能で充分ですし、挿絵などは、2~3千円でCD付の書籍が販売されており、パソコンのインターネットでも、無料で使用できるものがたくさんありますので利用してください。

福管連では、管理組合広報紙の事例研究や作成の方法について、「マニュアル」としてまとめていきたいと計画しています。その折には福管連会員組合の皆様にアイデア等のご提供をよろしくお願いいたします。

【マンションライフ福岡2014年夏季号掲載記事】